お話づくりはどこかパンづくりにも似ていると思うのです。
厳選された材料を大切にねかせ、おいしくふくらます──
暮らしの中で出会った感動を、手づくりで焼き上げ、多くの人と分かち合いたい。
そんな願いから生まれた「アンデルセンのメルヘン大賞」です。

アンデルセンのメルヘン大賞は、創業35周年の記念事業として1983年に創設した公募の童話大賞です。
当時、物は充足してきた一方で、心のゆとりがない時代において、どのようなことがお客様の暮らしを豊かにすることにつながるのか…。店名の由来になっているデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが童話を通じて世界中の子どもたちに夢や希望の灯をともしたように、私たちもお客様と「童話」を通じて夢と希望を分かち合いたいと願い、創設に至りました。
選考委員長には第1回より、立原えりか先生に、また選考委員には毎回画風の異なるプロの画家・イラストレーターに務めていただき、「自分がこの童話の挿絵を描きたい」と思うものを受賞作品として選びます。そして想像を膨らませて描いた挿絵と受賞者の童話を「アンデルセンのメルヘン文庫」という1冊の絵本として刊行するという独自の取り組みで、創作童話の世界を豊かに広げています。

第41回 アンデルセンのメルヘン大賞 受賞作品紹介

  • 一般部門 大賞

    「次のおしごと」

    • 作: 竹田 まどか
    • 選考・作画: ヒロミチイト先生

    勤続30年をすぎ、職場異動となったゆり子さん。送別会の帰り、クリスマスのイルミネーションが輝く街を歩いていると、見知らぬ靴屋を見つける。クリスマスブーツが並ぶ店の店主はトナカイだった。ゆり子さんは特注のブーツをつくることに。不思議なつくり方のブーツはサンタクロースのブーツで、サンタの仕事をするのだと知らされる。

  • 一般部門 優秀賞

    「日曜日のフリマで」

    • 作: 月日 みみ
    • 選考・作画: 山田 ケンジ (やまだ けんじ)先生

    お寺の境内でフリマが開かれる日曜日。ありさのお父さんは、出品するアンパンを焼いていてありさも手伝う。フリマはにぎわい、ありさはパンを売る合間に、ほかの店を見て回る。民族調の装いのおばあさんの店で、長い竹の筒をわたされる。耳に当てると波の音がして、おばあさんの歌が聞こえてきた。竹筒の中にはあずきが入っていると知る。

  • 一般部門 優秀賞

    「白い風見鶏」

    • 作: 久田 恵
    • 選考・作画: 横田 美砂緒 (よこた みさお)先生

    仲間たちと小屋に住む一羽の白いニワトリ。庭から見える教会の風見鶏を見て、自分も自由になりたいと思っている。一方、屋根の風見鶏はひとりぼっちで、大勢で暮らすニワトリがうらやましい。小鳥が「魔法でニワトリとかわらせてあげる」という。入れかわった風見鶏とニワトリ。けれど、風見鶏になったニワトリは「自由に動けない」となげく。

  • 一般部門 優秀賞

    「ぼく リングボーイ」

    • 作: 藤谷 クミコ
    • 選考・作画: 生駒 さちこ (いこま さちこ)先生

    小3の僕は写真家のおじさんの結婚式で、リングボーイを頼まれる。結婚式の日、指輪を運んでいた僕は転んでしまう。庭まで転がった指輪を追いかけ、気がつくと不思議な野原にいた。指輪をさがす僕を、ルリハムシやハンミョウが道案内してくれる。指輪を見つけて式場に戻る僕に、虫たちがついてくる。そして虫たちも一緒に結婚式の写真にうつる。

  • こども部門 大賞

    「コテツ、生きる」

    • 作: 上野 葉月
    • 選考・作画: 北見 葉胡 (きたみ ようこ)先生

    大好きな飼い主のばあちゃんが亡くなり、犬のコテツは生きる気力をなくす。ばあちゃんの娘のミヨに世話をされ、6年が過ぎる。コテツは天国へ行く煙の中でばあちゃんと再会する。ばあちゃんと話すうち、コテツはミヨに一度も感謝しなかったことに気づく。そしてミヨの前にコテツによく似た子猫が現れる。コテツと名付けてミヨは飼うことにした。