壁に掛けられている鏡の私。殺風景な部屋を映す毎日に退屈している。ある日、強風にあおられた私は落ちて割れ、捨てられる。私のカケラのひとつをカラスがくわえて飛ぶ。広い野原に落とされた私は、青空と雲を映し出す。やがて夕焼けや月や星を映し、心地よい静けさに包まれていく。これからずっと、自由と幸せを映せることを鏡の私は願う。
お話づくりはどこかパンづくりにも似ていると思うのです。
厳選された材料を大切にねかせ、おいしくふくらます──。
暮らしの中で出会った感動を、手づくりで焼き上げ、多くの人と分かち合いたい。
そんな願いから生まれた「アンデルセンのメルヘン大賞」です。
アンデルセンのメルヘン大賞は、創業35周年の記念事業として1983年に創設した公募の童話大賞です。
当時、物は充足してきた一方で、心のゆとりがない時代において、どのようなことがお客様の暮らしを豊かにすることにつながるのか…。店名の由来になっているデンマークの童話作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンが童話を通じて世界中の子どもたちに夢や希望の灯をともしたように、私たちもお客様と「童話」を通じて夢と希望を分かち合いたいと願い、創設に至りました。
選考委員長には第1回より、立原えりか先生に、また選考委員には毎回画風の異なるプロの画家・イラストレーターに務めていただき、「自分がこの童話の挿絵を描きたい」と思うものを受賞作品として選びます。そして想像を膨らませて描いた挿絵と受賞者の童話を「アンデルセンのメルヘン文庫」という1冊の絵本として刊行するという独自の取り組みで、創作童話の世界を豊かに広げています。
「アンデルセンのメルヘン大賞」
お知らせ
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2022.10.01
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2022.04.03
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2022.01.11
第42回アンデルセンのメルヘン大賞 受賞作品紹介
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一般部門 大賞
「私は鏡」
- 作: くろいわ 由卯
- 選考・作画: 服部 幸平 (はっとり こうへい)
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一般部門 優秀賞
「かみなりさまのおかげでね」
- 作: 宇都宮 みどり
- 選考・作画: 岡田 航也 (おかだ こうや)
人里離れた山奥の村で仲よく暮らす鬼たち。日照りが続き、鬼たちは食べる物に困っていた。ある日、鬼の子のおに太郎はケガをしたカミナリ様を助ける。カミナリ様の代わりにおに太郎が雨を降らせることに。太鼓のたたき方を教わり、カミナリ様の相棒の雲に乗って畑や森に雨を降らせていく。途中で人間の子と出会い、人間の村にも雨を降らせる。
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一般部門 優秀賞
「秋の音楽会」
- 作: 小林 栗奈
- 選考・作画: 永野 敬子 (ながの けいこ)
バイオリニストの夢に挫折した青年は、故郷の森でひとり最後の演奏をする。森から老人が現れ「5年後まだ音楽を愛していたら、ここに舞台と聴き手を用意して待っている」と言う。5年後の秋、森を訪れた青年を老人たちが待っていた。青年は心に沁みる音楽を奏でたい想いで演奏する。演奏後、老人たちの姿はなく、朽ちた倒木だけが残っていた。
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一般部門 優秀賞
「おひさまのランプ」
- 作: 正岡 知子
- 選考・作画: ゴトウ ノリユキ
冬眠のためのドングリを集めるシマリスとクマ。ススキ丘の柿の木の下で、秋に別れを告げるように一緒に叫ぶ。その夜、眠れないシマリスとクマは降り注ぐ星の光に導かれ、ススキ丘へ行く。光る柿の実とあたたかい落ち葉を見つけ、それぞれの巣穴へ持ち帰って冬眠する。春になり、目覚めたシマリスは芽が出たドングリを持ってクマの元へ行く。
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こども部門 大賞
「おおかみ達の願い事」
- 作: 土佐 弥依
- 選考・作画: 国栖 晶子 (くにす あきこ)
雪山に住むサンタクロースとその手伝いをする妖精のトンテ達。クリスマスを前にトナカイがけがをし、足跡からオオカミの仕業とトンテ達は考える。疑われたオオカミ達は“真実の願いの葉っぱ”に思いをつづる。葉っぱはサンタの元に届き、トンテ達はオオカミ達の家へ行くことに。家の様子から「みんなと仲よくしたい」オオカミ達の願いを知る。