アドヴェントのクリスマスランチ

デンマークでは、クリスマスの4週前の日曜日からクリスマスの準備期間「アドヴェント」が始まります。この日は「アドヴェントの第一日曜日」と呼ばれています(※1)。

クリスマスの到来を待ち侘びる文化は、「アドヴェントの日曜日」を象徴する4本のキャンドルを飾った「アドヴェントリース」にも見ることができます。この飾りは「アドヴェントの日曜日」ごとに火を灯すキャンドルの数を増やして楽しみます(※2)。

アドヴェントの皮切りは、スパイス風味の温かい飲みもの「グルッグ」と、たこ焼きをひとまわり大きくした、まんまるワッフル「エーブルスキーバ」。この時期には、クリスマスを祝う焼き菓子や料理の仕込みにかかります。農村社会だった頃は、春から飼っていた豚をアドヴェントに解体し、その豚を余すところなく一年分の食用肉として大切に使っていました。精肉はクリスマスのごちそうとして使われました。

アドヴェントのハイライトの一つは、「クリスマスランチ」と呼ばれる食事会です。「クリスマスランチ」は、職場の同僚や友人と共に囲む「忘年会」の要素を持つものと、親族などで囲む正月料理的な要素を持つものに分けることができます。前者はアドヴェントに、後者はクリスマスの祝日(※3)に開かれます。

アドヴェントのクリスマスランチは、夕方から深夜まで続くことが多く、スメアブロで3〜5品が供され、クリスマスらしい温かい料理とデザートが続きます。

食事の始まりは、にしんのマリネとロブロのスメアブロ。ライ麦パン「ロブロ」が縁の下の力持ちとして料理を支えます。にしんのマリネにはクリスマスらしいスパイスを使ったアレンジもあります。温かいスメアブロとして供される熱々の白身魚の揚げ焼きもロブロとの相性が抜群。レムラードソースとレモン果汁をたっぷりかけて楽しむ人気の一品です。
温かい料理には、鴨のローストやコンフィ、ハーブがたっぷり使われた腸詰肉など、クリスマスの雰囲気を楽しめる料理に人気があります。
デザートは「リ・サラマン」が定番。バニラ風味のミルク粥にアーモンドスライスを加え、柔らかく泡立てた生クリームで和えた一皿を冷たくしておき、あつあつのチェリーソースをかけます。クリスマス・イヴに用意する王道のデザートなのですが、クリスマス・ランチでひと足先に楽しむことが定番化しています。

アドヴェントのクリスマスランチは、クリスマスの到来前に一年を締めくくる行事として根付いています。

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※1 今年の「アドヴェントの第一日曜日」は12月1日ですが、たいていは11月下旬に到来します。
※2  「アドヴェントの第二日曜日」を迎えるまでは、「アドヴェントの第一日曜日」点灯したキャンドルだけを使い、第二日曜日に、その隣のキャンドルに火を灯します。「アドヴェントの日曜日」を迎える度にリースに灯すキャンドルの数が増えます。
※3 クリスマスの祝日は、12月25日と26日です。

Photo: © Jan Oster


くらもとさちこ
コペンハーゲン在住。広島県出身。30年以上になるデンマークでの暮らしで築いた知識と経験による独自の視点で、デンマークの豊かな文化を紹介する企画や執筆を中心に活動。『北欧料理大全』では、翻訳、編集、序章の執筆を担当。5月13日には『北欧デンマークのライ麦パン ロブロの教科書』(ともに誠文堂新光社 刊)を発刊。この秋に発刊された『パニラ・フィスカーのアイロンビーズ・マジック』と『デンマーク発 ヘレナ&パニラのしましま編みニット』(ともに誠文堂新光社刊)でも翻訳と編集を担当している。

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