旬を楽しむ

デンマークは、オーガニック先進国として知られています。その発展を支えてきたのは「協働」です。生産から流通、消費まで、食に関わる人々が行政や教育、健康などの分野と力を合わせてきました。外食や給食へのオーガニック導入によって需要を育て、生産の拡大につなげる。こうした取り組みは「デンマークモデル」と呼ばれています。

今、19歳の息子は、1歳になる前に保育園に入りました。当時、保育園を探していると、3園に1園くらいが「当園ではオーガニック食材を使っています」と紹介していたことを覚えています。その後、コペンハーゲン市の幼児施設でも、オーガニック給食の取り組みが広がり、現在はすべての園でオーガニック食材が導入されています。

私は、息子が3歳になる前から、幼稚園のオーガニック菜食給食プログラムに関わるようになりました。それは、北の国で育つ穀物や豆類、野菜やくだものの旬を学び直すきっかけとなりました。

たいていの食品が一年中手に入る中で、デンマーク産のオーガニック植物性食品を選んで献立を考えることは、新鮮な挑戦でした。とりわけ冬は、使える地元の食材が限られます。りんごや根菜、玉ねぎを中心に、どう調理して変化をつけるか。毎日の給食作りでは、工夫が欠かせませんでした。

けれども、何度か冬を越すうちに、春野菜のありがたさや、夏と秋、それぞれの恵みをはっきりと感じるようになり、それが大きな喜びにつながりました。また、地元のオーガニック食材に慣れると、環境への影響や動物福祉への関心も広がっていったのです。

旬を待つ楽しみがわかると、食材の使い方も変わります。その季節には終わりがあるからこそ、今あるおいしさを大切に味わいたい。旬を楽しむことは幸せであると同時に、持続可能な食のあり方にもつながっていると気づきました。

そんな季節の移り変わりを、食卓で支えてくれるのが穀物です。大麦やオーツ麦と並んで、デンマークで長く栽培されてきたライ麦は、1000年以上にわたりパンの原料として人々の暮らしを支えてきました。ライ麦をまるごと使って焼くロブロは、デンマークの人々にとって生きるための糧であり、暮らしや文化に深く根づいたパンでもあります。冬に地元の野菜が限られる中で、ライ麦をまるごと使ったパンから、ミネラルやビタミン、食物繊維が摂れる。そのことも、私には目から鱗でした。

移り変わる野菜やくだものと、一年を通して食卓を支えるロブロ。そこに豆類や肉、乳製品などが加わり、デンマークの食文化が形作られてきました。旬の恵みを楽しむ食卓には、いつも穀物という土台がある。それも、オーガニック食材と向き合う中で学んだことのひとつです。

 

Photo: © Jan Oster


 

くらもとさちこ
コペンハーゲン在住。広島県出身。30年以上の暮らしで築いた独自の視点で、デンマークの豊かな文化と人々の暮らしに密着してきたパン「ロブロ」の魅力を伝えている。『北欧デンマークのライ麦パン ロブロの教科書』著者。『北欧料理大全』『スモーブロ・ザ・マニュアル』訳者。

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